ステルスマーケティング規制|広告の方法を見直して適切な運用を

公開:2023年10月26日

広告であることを隠した状態で、広告としての役割を持っている表現を行うことをステルスマーケティング(ステマ)と言います。2023年10月から、このステマが法律で禁止となりました。具体的にどのようなものがステマに当たるのか、その基準を中心に、ステマ規制に関して解説します。

ステルスマーケティング規制の詳細

ステマ規制の経緯、対象、罰則などについて詳細に解説します。

禁止になった経緯

これまでに、ステマによってトラブルになったケースや、問題が大きくなったケースがあります。

有名人やインフルエンサーが「商品を安く落札できた」としてオークションサイトを紹介していた事例では、運営会社が宣伝であることを隠したうえで宣伝を行って欲しいと依頼していました。

このオークションサイトでは入札件数が増えるほど運営会社に手数料が入るシステムとなっていたのですが、運営会社が不当に入札価格を吊り上げてユーザーへの販売を妨害し、利益を上げていました。

手数料をだまし取る目的だったとして、この運営会社の役員には詐欺罪で懲役3年、執行猶予5年の判決が下されました。

ステマに協力した有名人・インフルエンサーは、刑事事件に関与していた人物として社会的な信用を大きく落としてしまいました。

彼らに騙されて多くの被害者が出たため「ステマ」という名前が世に広く知れわたった事件でもあります。

こうしたトラブルの原因となるだけでなく、ステマを行われると消費者が判断を適切に下せない点に問題があります。

中立な立場での口コミであると思いながら情報を処理するのと、運営会社から依頼されている広告であると認識しながら情報を処理するのでは、消費者の見方が明らかに異なります。

消費者が誤った認識に基づいて購入などの契約行動を行う可能性があるため、ステマは禁止されることとなりました。

規制の対象

これまでも、ステマは景品表示法における不当表示の一部として規制されていましたが、2023年10月の景品表示法改正により、これが明文化されました。

規制の対象となるのは、商品やサービスを提供している事業者です。

事業者からステマを依頼された第三者は規制対象外です。

例えば、A社が開発・生産・販売している化粧品を宣伝したいと思った際に、インフルエンサーBに依頼を行ったとします。

この際、A社はBに対して「広告であることを隠して商品を褒める内容を投稿してほしい」と依頼したとします。

Bがこれに応じてステマを行った場合でも、法的に罰則があるのはA社に対してのみです。

もちろん、これまでの経緯などから、ステマに対する社会の目は厳しいので、BもSNSなどでの炎上は免れないでしょう。

また、第三者に広告を依頼するケースではなく、自社製品を第三者として宣伝する行動もステマと解釈されます。

先ほどの例でいうと、A社の役員Cが、A社とは無関係の人物であるように見せかけて商品を褒めるような投稿を行った場合、ステマに該当します。

これらはいずれも「広告である」ことを消費者が認識できない形で広告表示されている点で法律違反となります。

禁止になる時期

禁止となるのは、法律施行日の2023年10月1日からです。

ただし、インターネット上に閲覧可能な状態で投稿が残っている場合、法律施行日以前に行われたステマについても、行政処分の対象となります。

過去に投稿したものの中に、上記で解説したステマ行為に該当するものがあった場合は、広告と分かる形に修正するか、閲覧不可能な状態に修正することが求められます。

事業者は、自社の過去の発信に問題がないか早急に確認しましょう。

罰則

ステマ規制に違反した場合は、消費者庁から措置命令が出されます。

措置命令では、

  • 不当表示を行ったことを消費者に周知する
  • 再発防止策を策定して実施する
  • 今後、同様の違反行為を行わない

などの命令が発せられるケースが多いです。

措置命令を受けた事業者は、消費者庁や都道府県のホームページで、事業者名や違反内容などについて公表されます。

措置命令を無視した場合、もしくはこれに違反したような場合には、違反者に対して2年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科されます。

また、違反者が所属している法人に対しても、3億円以下の罰金が科される可能性があります。

加えて、法人の代表者や役員に対しても、措置命令違反を知りながら必要な措置を講じなかった場合には、300万円以下の罰金が科される可能性があります。

もちろん、こうした罰則を受けるだけでなく、社会的信用も失います。

新しい広告の運用基準は

法改正によって、景品表示法に適応した適切な表記が求められるようになりました。

ここでは、具体的に広告表示が必要なものと、不必要なものについて解説します。

広告表示しなくてはいけないもの

従来ステマとして解釈されていた行為については、原則として広告表示が必要となりました。

具体的には、自社の関係者が第三者を装って商品を褒める、あるいは競合商品のネガティブレビューを記載するような行為は、ステマと見なされます。

インフルエンサーなど第三者に対して、広告表示なしで、文言や内容を指定したうえでレビューを投稿するよう依頼する行為も、ステマに該当します。

こうした場合には「広告」「PR」「A社から商品の提供を受けてレビューした」など、事業主とレビュー投稿者が同一、もしくは両者の間に利益関係があることを明記する必要があります。

また、このような宣伝行為に該当する表現を行っていたとしても、文字が極端に小さかったり色調が周囲のものと似通ったりしていてユーザーが認識しづらい表記になっているケースや、「個人の感想です」など事業者による表記であると判断しにくい表現を用いている場合は、ステマとして法律違反となる可能性があります。

ユーザーが「この投稿内容は広告である」と確実に認識できる方法で表現を行う必要があります。

ステマ広告に該当しないもの

一方で、事業者が第三者に商品を無償で提供し、レビューを依頼していたとしても、内容については第三者にゆだねられている場合は広告とは見なされません。

例えば、A社が自社商品をインフルエンサーBに無償提供し、これについてレビューを依頼したとします。

この際、「褒めるような内容で記述をお願いします」と依頼し、Bが実際にそのようなレビューを広告表示なしで掲載した場合は、景品表示法違反となります。

「レビューの内容についてはお任せします」「感じたままの内容で構いません」などの依頼であれば、Bの自由意思によるレビューと判断され、景品表示法には違反しないと考えられます。

ステルスマーケティング規制によって今後考えられる影響

ステマの規制以前から、景品表示法によってこうした公告方法には規制が加えられてきていました。

しかし法改正により、具体的に違法となるケースが明文化されました。

これにより、過去に行われているステマについても、現時点で閲覧可能となっているものについては行政指導が行われる可能性があります。

今後に考えられる影響として最も大きいのが、自社の関係者が過去に行っているSNSへの投稿等の再検証が必要となることでしょう。

同業他社の競合製品に対するネガティブなレビューを行っていた場合、自社製品の売り上げをプラスにしようという悪意がなかったとしても、景品表示法違反となる可能性があります。

広告である旨の表記を付けず、自社の名称も記述しないまま、自社製品を褒めるような投稿を行っていた場合でも、同じく景品表示法違反となるかもしれません。

自社の関係者が何の気なしに行っていたものがステマと判断されてしまうリスクがありますので、まずはこれの確認と修正・削除対応を行う必要があります。

また、過去にインフルエンサーに対してステマを依頼していた場合には、もちろんその投稿に対してのアクションが必要です。

具体的には、非公開・削除処理、もしくは動画に『広告』や『事業主から宣伝の依頼を受けている』という旨を記載してもらうこととなります。

加えて、これから打ち出していく広告戦略でも課題が生じるでしょう。

従来のようにインフルエンサーに商品をレビューしてもらうような方法を取る場合であっても「率直に感じた通りにレビューしてもらう」方向にシフトしていくことが望ましいです。

自社での宣伝活動は、かならず事業者名が分かる形、もしくは「広告である」とはっきり判断できるような形での発信が求められます。

こうした点に不安を感じる場合は、顧問弁護士などと相談しながら、広告の運用方法について検討を進めていく必要があります。

広告宣伝は法律を守って適切に行おう

ステマは、消費者の適切な消費活動に害があるという考えから、景品表示法により規制されることになりました。

違反したとしても最初は行政処分だけで済みますが、罰金だけでなく、法を守れない事業者として、社会的信用が大きく低下するデメリットがあります。

ユーザー目線に立って、どのような広告宣伝であれば消費者に噓偽りなく情報を伝え、安心して商品を購入してもらえるかを考えた手法を検討しましょう。

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