ひとつの行動が全体を変える!システム論について

最終更新:2024年09月11日 公開:2024年10月30日

「色々気を遣っているのになぜか対人関係がうまくいかない」
「目標も課題もはっきりしているのになぜか達成できない」
そんな悩みに苦しんでいる方、それは「システム論」で案外簡単に解消できるかもしれません。
この記事では、問題を解決する手法の一つとしてシステム論の考え方を紹介します。システムって何?という基本的なところから、具体的な状況の例まで簡単に解説するので、難しく考えず、気楽に読んでみてください。

システム論とは

このパラグラフでは、システム論の考え方について説明します。

システムって何?

システム論と聞いて、最初に頭に浮かぶ疑問は「そもそもシステムって何?」ということでしょう。まずはシステムの定義と考え方について紹介します。

システムとは「意味を持つ集まり」のことです。また、システム同士が関係することでさらに別のシステムが生まれるとシステム論では考えています。具体例として、人間の生態をモデルに紹介します。

例えば、小学校という環境があります。小学校は7歳から12歳までの子どもに社会生活を送るうえで必要な学びを与える、労働から遠ざけるなどの目的で運営される、社会の要素の一つです。このような目的のある要素をシステムといいます。
また、小学校という要素は子どもや教師といった小さなシステムが集まり、関係しあうことで成立しています。そして小学校やPTA、自治体といったシステムがかかわっていくことで、地域社会という大きなシステムになっていきます。

このように、人間の生態で言えば個人や個人の所属する集団、思想といった、意味のある区切りで分けられたものがシステムです。つまり、意味を与えることができるものはすべてシステムと考えることが可能なのです。

例)生態学的なシステム

システム論は関係性に着目する

システム論とは、全体を考える際、部分(システム)ごとに着目するのではなく、あるシステムと別のシステムがどのように関係し、影響を及ぼしあっているのかということに着目する考え方です。
システム論は社会学や心理学、工学などさまざまな分野で応用されており、その分野ごとに重要視する点に若干の差異はありますが、「関係性に着目する」という基本的な考え方は変わりません。

なぜ関係性に着目するのかというと、部分の検討だけでは限界があるからです。例えば人体の仕組みを理解するとき、心臓や肺など組織ごとの理解は大切です。しかしそれらが実際にはたらくときは、個別ではなく互いに影響を与え合っています。そのためバラバラに考えては正確に仕組みを理解できません。物理的な存在だけでなく、関係性という概念に着目することが必要です。システム論は関係性を分析するために生まれた考え方なのです。

さまざまな要因が重なり合って結果につながるとシステム論的に考えることで、状況把握がより鮮明になり、柔軟な対応が可能になります。また、大きなシステムは小さなシステムがバランスを取り合い調和することで形成されています。つまり、小さなシステムに働きかけることで、連鎖的に大きなシステムにも影響を与えることができるのです。

人間関係における原因と結果のとらえ方

こころという概念的なものを研究する心理学と、関係性に着目するシステム論の考え方は相性がよいです。そのため心理学では人間関係にシステムの考え方を応用します。

例えば家族療法の分野では、家族という集団をシステムとして考える家族システム論が大きな軸となっています。家族システム論は家族以外の組織にも拡大できるため、本文はこの家族システム論を参考にしています。

心理学の分野でシステム論を人間関係に応用する際、円環的因果律という考え方を意識します。円環的因果律とは、システム論に影響を受けた考え方で、原因と結果は相互に影響し合うというものです。

例えば、Aという事象の原因がBであったとしても、Cという事象の原因はAであり、実はBという事象の原因がCにあるかもしれない、といった具合です。このように、物事をつなげて考えれば円環的に関係しているのかもしれないと考えることで、より柔軟に人間関係を理解できます。

また、人間関係の悪循環を改善しようとするときは「偽解決」に気を付けなければなりません。偽解決とは、問題に対処しようとする行為そのものが悪循環の一因になってしまうことを指します。
偽解決に陥ったときは、思い切って対処しようとする行為自体を止めるのも一つの戦略です。そうすることで、システムの構造が変化し事態が好転する場合があります。システムの中では、行為を止めることも変化をもたらす行動になるのです。

具体的に考えてみよう

このパラグラフでは、システム論を実生活で役立てる具体例を例示します。

仕事の中のシステム

D部署では、会議時間を間違えたり、資料の完成期日を守れなかったりといった小さなミスがなぜか頻繁に起こっています。状況を詳しく確認すると、指示を出すシステムと指示を遂行するシステムの間には以下のような関係性があることが分かりました。

指示出しシステム:部署内での連絡は個別にメールで送る

それぞれの予定を把握できているのが当人のみになっている

予定の管理が完全に個人の裁量に任されている

指示を遂行するシステム:予定の管理が苦手な人、忙しい人がミスすることを防げない
→ミスに追われさらに 仕事の精度が下がる

この情報によると、D部署システムは指示を出すシステムと指示を遂行するシステムで構成されていることが分かります。ここに新しいシステム、補助システムを介入させると、システム同士の関係性に変化が生まれます。

指示出しシステム:個別に指示を出す

補助システム:共有スケジュールを作成し、共有できる予定は共有する

予定の管理にグループメンバー全体で気を配れる

予定の管理が苦手な人、忙しい人に声掛けをすることでミスが防げる

個人の得意不得意や仕事内外を含めた状況に手を加えることは難しいですが、システム論的に考えてアプローチすればシステム同士の関係性を変化させることはそれほど難しくありません。

人間関係の中のシステム

高校生のEは、部活内の人間関係に悩んでいます。

E後輩Fは遠まわしな表現が苦手です。意見をする際悪気はないとしても言い方がきつく、たびたび誰かと激しく衝突してしまいます。EFに対してたびたび注意をしていますが、注意をするとひどく反発するため、むしろFと部内のメンバーの関係性はこじれるばかりです。

そこで、どうしたら冷静にFと話し合えるのか詳しい状況を分析してみると、以下のようなことが分かります。

Fが誰かに意見をして衝突する(意見自体は正当)

EFの言動をその場でたしなめる

いらだっているFは自分の意見そのものを否定されたように感じる

FEに対して反発する

Fが理不尽にEに対して反発しているように見える

Fに対して否定的な行動をするメンバーが増え、Fはそれに意見する

どうやらEに対してFが反発しているのは、衝突が起こった直後という時間も関係していそうです。

また、Fに対する他のメンバーの対応がFの気に障っているともいえます。Fの言い方の癖そのものや、他のメンバーの気持ちをただの先輩であるEが変えるのは難しいです。

しかし、Fとかかわるタイミングを変えることは可能ではないでしょうか。

例えば、EFにその場ですぐに注意はせず後でメールで行うようにしてはどうでしょう。そうすれば、EFが他のメンバーの前で反発することは防げるでしょう。そうなれば、他のメンバーのFへのイメージも変わっていくのではないでしょうか。

このように、声掛けのタイミング一つにしても、生活の中では大きな役割を担っています。そういった形には現れない要素や影響に気がつけるのも、システム的な考え方のメリットです。

まとめ

この記事の要点を簡単にまとめると以下の3つになります。

  • システム論とは、全体を考える際に部分ごとに着目するのではなく、部分が影響を及ぼしあっていることに着目するという考え方
  • 直接的な問題を探すだけでなく、全体を見て、何が何に影響を与えているのかを考える
  • 環境や時間、具体的な物質を変えてみるだけで対人関係に変化を与えられる

システム論的考え方は、私たちの視野をぐっと広げてくれます。この考え方を実生活に活用して、問題へのアプローチの幅を広げたり、快適な環境づくりに役立てたりしてみてくださいね。

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