世界的な「半導体不足」が続くワケー背後にある複雑な要因

最終更新:2024年01月10日 公開:2024年01月24日

半導体は、電気製品やコンピュータなどに用いられる技術で、私たちの暮らしを裏で支える重要な役割を担っています。身近な半導体製品の例として、生活家電や自動車、スマートフォンなどが挙げられます。

そんな「半導体」が今、世界的に不足しています。
半導体不足による関連製品の生産停止などが原因で、経済活動に少なからず悪影響が生じています。
国内でも、半導体不足で「Suica、PASMO(ICカード)の販売中止」が余儀なくされている状況です。
URL:異例のSuica・PASMO「発売中止」の裏で起こっているコトとは何か(https://www.businessinsider.jp)
URL:記名式の「Suica」及び「PASMO」カード発売の一時中止に関するお知らせ (jreast.co.jp)

なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。
様々な視点から「半導体不足」について解説します。

半導体を知る

半導体について

半導体とは、導体【電気を通す物質】と絶縁体【電気を通さない物質】の中間の性質を持つ物質の総称です。半導体が使用されている電子部品や製品全般を「半導体」と表現する場合もあります。
自然界(地殻)に豊富に存在するシリコン【ケイ素】は主要な半導体材料として有名です。

半導体の機能

半導体特有の機能を簡単に説明します。

電気の流れを制御する


半導体部品の主要な役割に、電気の流れを制御するというものがあります。機能としては、「電流のON/OFFの切り替え」、「電気の流れを一方向にする」の2つに大別されます。機能自体が単純なので、それ単体で複雑な処理を行うのは困難です。よって、複数の半導体部品を組み合わせ、高度な情報処理を可能にしています。
→トランジスタやダイオードなど(電子機器の部品)に活用されています。

電気エネルギーを光へ変換する/光のエネルギーを電気へ変換する

半導体は、(電流に含まれる)電子が持つエネルギーを「光」に変換できます。電子が持つエネルギーの大小で、放出される光の種類が変化するという特徴があります。
→LED【発光ダイオード】や有機EL、レーザーなどに活用されています。

また、半導体は光のエネルギーを「電気」へ変換できます。太陽光が当たると、内部に存在する電子が動き出し、それと同時に電気(電流)が生じる仕組みです。
→太陽光発電用パネルや、カメラのセンサーなどに活用されています。

半導体の用途


半導体は、現在のほとんどの電子機器に搭載されています。高機能で利便性の高い電子機器には、複雑な情報処理を可能にする半導体部品が欠かせません。
身近な用途の例としては、自動車・家電製品・コンピュータなどが挙げられます。もちろん、パソコンやスマートフォン等のデバイスにも半導体が搭載されています。これらの製品に多彩で便利な機能が搭載できるのも、半導体のおかげです。
また、現代社会のインフラにおいても、半導体需要は非常に高いです。半導体技術は通信技術や交通機関、医療システムなどに利用され、人々の暮らしを根幹から支えています。

半導体は私たちの生活に広く浸透しており、今や半導体なしの生活は考えられない程です。

なぜ、「半導体不足」なのか

昨今、世界的な半導体不足が大きな問題となっています。
なぜ、このような事態になったのか、その原因について需要と供給の面から解説します。

新型コロナウィルス感染症の影響


半導体不足の発端となった出来事は、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大と言われています。
リモート【遠隔】需要が加速し、それと同時にスマートフォンやパソコンなどのデバイス(半導体機器)需要も急増しました。また、ステイホーム(巣ごもり)習慣の浸透により、テレビやゲーム機などの娯楽家電の需要も拡大しています。
その一方で、パンデミックの影響による工場の閉鎖や従業員(技術者)の減少などが原因で、半導体の生産能力が全体的に低下していました。ライフスタイルの変化に伴う需要の変動に対応しきれず、需要と供給のバランスが崩壊した為に半導体不足が生じたとされています。

次世代に向けた「新たな需要」

今後発展し得る新たな技術にも、当然ながら半導体は必要不可欠です。近年では、人工知能【AI】や5G通信などのIT技術の普及に伴い、半導体需要がますます高まっています。また、「声で操作可能なスマート家電」や「自動運転技術が搭載する車」などといった、より優れた半導体製品の開発も期待されています
しかし、半導体メーカーが「新たな需要」に応えたくても、すぐに対応できない場合があります。現状では、既存の半導体工場の老朽化や悪天候による被害・影響が生産能力を低下させ、問題となっています。工場の設備改善には大量の資金と時間が必要で、これが需要への迅速な対応を困難にしています。

国際情勢に揺さぶられる半導体


米中対立やウクライナ情勢などの国際情勢の変動は、半導体業界に影響を与えています。
米国が課した制裁(半導体製造に関連する物品の輸入規制など)により、中国の生産能力は大幅に低下しました。その結果、中国の半導体輸出量が激減し、米国も供給不足に直面する状況となりました。この悪循環は、世界的な半導体不足が長引く一因となっています。
また、半導体生産に必要な希ガスや希少金属の供給は、ロシアやウクライナへの高い依存度があるため、輸出入規制による原料不足が深刻化しています。

半導体不足による影響


先述の通り、半導体はほとんどの電子機器に搭載されています。IT・デジタル化が進む現代において、半導体はなくてはならない存在です。そんな今、半導体不足によって社会や暮らしにどのような影響が生じているのでしょうか。半導体不足による影響について説明します。

製品生産が困難に

半導体不足が続くと、製品の生産が遅延もしくは停止します。製品の流通が滞ると、私たちの暮らしや経済活動に悪影響を及ぼす可能性があります。半導体製品価格の高騰や生産量の縮小により、市場における需要と供給のバランス崩壊が想定されます。
また、企業側も製品の生産ができないとなると、業績不振や事業撤退等のリスクを背負うことになります。特に、自動車産業は半導体不足により大きな影響を受けています。多種多様な便利機能が搭載されている自動車には、多種多様な半導体の搭載が必要です。特定の半導体だけが足りない場合であっても、製品の生産/出荷量は減少してしまいます。

粗悪品流通のリスク

半導体の製造には、高度な技術と十分な設備が必要です。この条件を満たすには、膨大なコストと時間がかかります。しかし、半導体が不足(価格が高騰)している今、低品質・低価格の代替品を用いた粗悪品が世に出回るリスクが考えられます。安価な粗悪品の流通により、高価な正規品の販売数が減少し、メーカー側に損害を与える可能性があります。

安全性、健康を脅かす「半導体不足」

半導体不足は、私たちにとって必要な製品を作れない/入手できない「問題」を引き起こします。半導体は、エアコンや冷蔵庫などの健康維持には欠かせない製品に使用されています。また、医療/航空などの高い精度と信頼性を重視する分野の製品にも使用されています。これらに低品質の半導体が用いられた場合、私たちの安全と健康が十分に保護されない危険性があります。

今後の見通し


半導体不足は、様々な要因が重なって生じている問題であるため、具体的な回復時期を予測するのは困難です。自然災害や紛争の発生により、不況が長引く可能性も考えられます。

一方で、近年の半導体需要は拡大傾向にあります。高度なAI/IT技術を追求する現代社会では、より高品質で高性能な半導体の開発が求められています。今後は、半導体不足の解消と半導体産業の発展を支えるための取り組みが必要となるでしょう。

また、半導体不足が続く中で、需要が高まりつつあるこの状況を、「これから大きく成長するチャンス」と捉える考え方も存在します。世界の主要な半導体メーカーは今年(2023年)、大規模な生産工場の建設や投資計画を相次いで発表しています。このように、半導体不足の解消に向けた前向きな取り組みや考え方が広まっているのも事実です。

まとめ

新型コロナウィルス感染症による需要の変動や、世界情勢の動向などの複数の要因が重なり、半導体不足が世界的な問題となっています。さらに、AIやIT技術の発展に伴い、近年の半導体需要は急増しています。これも、半導体不足を悪化させた要因の1つです。

半導体不足は、多くの製品の生産停滞、粗悪品や偽物の流通などの問題を引き起こす可能性があります。この状況が長引くと、私たちの健康や暮らしの安全が危険にさらされるかもしれません。

今後も半導体需要の拡大が予想されるので、半導体産業の発展を支える取り組みが必要です。

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