Wordの変更履歴を完全に削除する方法|最終版の提出前に確認したい設定

Wordにおいて、ビジネス文書やレポート、契約書などのやりとりでよく使われる「変更履歴(変更の記録)」機能。Wordで複数人による編集作業を行う際には便利ですが、そのまま最終版を提出すると「修正の履歴」や「コメント」が残ったままになっているケースも少なくありません。
これは相手に余計な情報を見せてしまうだけでなく、機密情報や社内でのやりとりが外部に漏れてしまうリスクにもつながります。
本記事では、Wordの変更履歴を完全に削除する方法について、細かく解説します。提出前・納品前に必ず確認したいポイントもまとめて紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
この記事の目次
そもそもWordの「変更履歴」とは?
「変更履歴」とは、Wordの「変更履歴の記録」機能を使って、文章内で行われた修正や加筆・削除の内容を自動的に記録する機能です。変更が加えられるたびに、誰が、どこを、どのように編集したかを記録し、画面上に赤字や吹き出し、取り消し線などで表示します。
これは編集の経緯を確認したり、複数人での共同作業を円滑に進めたりする上で非常に便利ですが、「最終版」として納品・共有する際にはすべての変更履歴を削除・反映しておくことが大切です。
なぜ変更履歴を削除する必要があるのか
提出ミスが信用を失う原因に|よくある失敗とそのリスク
Wordの「変更履歴」や「コメント」機能は、社内のレビューや複数人での文書編集において非常に有効です。しかし、この便利な機能が、提出時の大きな落とし穴になってしまうこともあります。
たとえば、ある企業ではクライアント向けに提案書を提出した際、社内での価格交渉のやり取りがコメントとして文書内に残っていました。担当者は見た目を整えていたつもりでしたが、変更履歴が残ったままの状態で提出してしまったのです。その結果、値下げの意図や社内の判断プロセスが顧客側に漏洩し、信頼を損なう結果となりました。
このような「変更履歴やコメントの消し忘れ」は、作成者本人は気づきにくく、提出後に発覚することが多いため、トラブルの火種になりやすいのが特徴です。また、社内用語や軽率な言葉遣いがコメントに残っていた場合、受け取る側に不快感を与えてしまう可能性もあります。
変更履歴・コメント・プロパティ情報はすべて“漏洩リスク”
Wordファイルには、目に見える情報だけでなく、ファイル内部に保存された「見えない情報」=メタデータが存在します。たとえば以下のような情報が知らぬ間に含まれている可能性があります。
- 編集履歴(削除された文言や書き直しの内容)
- コメント(指示、意見、内部メモなど)
- 文書のプロパティ情報(作成者の名前、最終保存者、作成日時、会社名など)
これらの情報は、相手側のWordの表示設定や、文書プロパティの確認によって簡単に見られてしまいます。つまり、内容を整えたつもりでも、「社内のやり取りが丸見え」になっている状態で提出してしまう恐れがあるのです。
とくにプロパティ情報に関しては、企業名や部署名が自動的に記録されていることもあり、顧客や第三者に「どの端末・誰が作ったか」が明らかになることもあります。
変更履歴を削除する手順
Wordの「校閲」タブから、変更履歴やコメントを削除することができます。以下の手順に従って操作しましょう。
1.「校閲」タブを開き、「校正履歴」にあるメニューをクリックします。
2.表示されたメニュー内の「変更履歴/コメントなし」をクリックします。
そうすることで変更履歴とコメントを非表示にすることができます。
ファイル内の「プロパティやメタデータ」も一緒に削除しよう
Word文書には、変更履歴だけでなく、作成者名・編集者・保存履歴などの「ドキュメントプロパティ情報」も含まれています。これらの情報は、画面上では目に見えないため気づきにくいですが、ファイルのプロパティやメタデータとして埋め込まれており、文書を開いた相手が確認できる場合があります。たとえば、作業者の氏名や会社名、コメントの履歴などが残っていると、個人情報や機密情報の漏洩につながる恐れがあります。これらの情報も提出前には削除しておくのが望ましいです。
1.「ファイル」をクリックします
2.「情報」をクリックし、「問題のチェック」から「ドキュメント検査」をクリックします
3.項目にチェックを入れて「検査」をクリックします。
4.不要なデータがあった場合、「すべて削除」をクリックします。
この機能で、ファイル内に残っている見えない個人情報や履歴も一括で削除できます。
安全に提出するならPDF変換も有効
提出時の安全性をさらに高めるには、WordファイルをPDFに変換するのがおすすめです。PDFにすれば、変更履歴や編集情報が復元される心配がなく、文書のレイアウトやフォントも相手の環境で正確に表示されます。
1.変換は「ファイル」をクリックします。
2.「エクスポート」をクリックし、「PDF/XPS ドキュメントの作成」から「PDF/XPSの作成」をクリックします。
組織・チームで徹底するための対策
提出前の「チェックリスト」やルール化のすすめ
Word文書の変更履歴やコメントを残したまま提出してしまうミスは、個人の不注意に起因することが多いと思われがちですが、実際には組織としてのルールや確認体制が整っていないことが根本原因となっているケースも少なくありません。
特に業務でWordファイルを頻繁に使用するチームや部署では、提出物の品質を一定に保つために、「提出前チェックリスト」を用意し、誰が見ても抜け漏れなく確認できる体制を整えることが重要です。
提出直前になって慌てないよう、以下のチェックリストを使って履歴の有無を確認しておきましょう。
- 表示設定で「最終版(表示)」や「元の文書(表示)」にして履歴が見えないか確認
- [校閲]タブから「すべての変更を承諾」した
- コメントが残っていないことを確認した
- 印刷・PDF出力時に「マークアップ」が含まれていない
- ドキュメント検査ツールで個人情報・履歴を削除済み
このようなチェックリストを業務フローに組み込むことで、属人的な確認作業を排除し、ミスの再発を防止できます。さらに、部署内でWord文書を提出する際の「品質基準」を明確にしておくことで、誰が作成しても一定のレベルを保てるようになります。
ダブルチェックやPDF化を習慣にするメリット
どれだけ丁寧にチェックを行っても、一人で確認するだけでは見落としが発生するリスクはゼロになりません。そのため、提出前には同僚や上司など第三者によるダブルチェックを行う仕組みを取り入れることが有効です。
また、提出時にはWord形式のままではなく、必ずPDFに変換してから送信する習慣をつけることで、意図しないレイアウトの崩れや履歴の表示を回避できます。PDFにすることでファイルが固定化されるため、受け取る側の環境に左右されず、信頼性の高いドキュメントとして受け取ってもらえる利点があります。
「チェック+PDF化」という二段階の提出準備プロセスをチームで共有・徹底することで、文書管理の信頼性が格段に向上し、トラブルの発生を未然に防ぐことにつながります。
Word文書の納品・共有前には“履歴ゼロ”を確認しよう
Wordの変更履歴は非常に便利な機能ですが、最終版に残っていては時にマイナスな印象を与えてしまうことがあります。社外文書やクライアント向け資料では、内容以上に「信用性」が問われる場面もあるため、履歴やコメントの削除は徹底したいポイントです。
ただ「表示されていない」だけでは安心できません。履歴の承諾・コメント削除・印刷設定・ドキュメント検査までを丁寧に行い、誰に見られても問題のない状態に整えてから提出しましょう。