AI開発の主要企業―アメリカに集中 日本の企業研究も追随

最終更新:2024年06月26日 公開:2024年07月03日

これからのビジネスシーン・ライフスタイルを大きく変革すると期待される人工知能(AI)は、日々その技術が洗練されています。特に生成AIに関してはより安全で適切な情報を生成できるように進化が続いています。新しい技術に関する情報をスムーズに入手できるよう、注目したい世界・日本の企業・組織について解説します。

AI研究の国別主要企業・大学

AIに関する研究を国家別に見ると、アメリカがほぼ独走状態です。

アメリカ

アメリカは、AI研究が最も進んでいる国です。

組織別に見たAI研究をリードしている企業・大学を評価したランキングでは、上位10組織中8件がアメリカの組織です。

企業では、

  • Google
  • Microsoft
  • Facebook

大学では、

  • MIT(マサチューセッツ工科大学)
  • スタンフォード大学
  • カーネギーメロン大学
  • カリフォルニア大学バークレー校
  • カリフォルニア大学ロサンゼルス校

が、それぞれランクインしています。

家庭用の家事手伝いAIロボットの研究(カーネギーメロン大)といった個人の生活を豊かにするものや、走り方を学習して時速14kmで移動する四足歩行型ロボットの創出(MIT)などの災害対策・軍事等に活用可能なAIなどの基礎研究が行われています。

また、生命保険会社の日本生命がスタンフォード大と提携して、AIを用いた慢性疾患予測を共同研究するなど、研究を中心とした商業的な展開も進んでいます。

10位以下の民間企業でも、

  • Amazon
  • IBM
  • NVIDIA
  • Apple

など、アメリカのIT関連サービス業の企業が多く名前を連ねています。

NVIDIAは、AIの研究・動作に必要不可欠なGPU(Graphics Processing Unit)の研究・開発を行っている企業で、他企業にGPUを提供しているほか、クラウド上のデータに対するAI学習を利用可能にしています。

IBMは、これまでにAIが学習した内容をもとに、独自に新しいことを学べる『流動性知能』に着目し、研究開発を進めています。

また、ChatGPTを展開するOpenAI社など、AI分野に特化した企業もアメリカに本社があります。

中国

中国も、近年では特にAIに関する技術に力を入れています。

トップ10圏内には、清華大学がランクインしています。

10位以下の企業には、

  • Huawei(ファーウェイ、華為技術)
  • Alibaba(アリババ、阿里巴巴集団)
  • Tencent(テンセント、騰訊)
  • Baidu(バイドゥ、百度)

などが挙げられています。

いずれも、電子機器・IT関連サービス業の企業ですが、それぞれ、

  • ファーウェイ:通信端末
  • アリババ:オンラインショッピング
  • テンセント:SNS、ストリーミングサイト
  • バイドゥ:検索エンジン、ストリーミングサイト

に強みを持っています。

各社のAIの研究開発方針は、アメリカの各企業と類似しています。

AI生成式の対話が可能となるファーウェイのカスタマーサービス、アリババ『通義千問』、バイドゥ『文心一言』は、GoogleアシスタントやAppleのSiriと類似したサービスです。

テンセントでは、オンライン広告をAIによって最適化するなどの取り組みが行われています。

その他

AIの研究開発に関する先進的な取り組みを行っている組織の多い国は、アメリカ、中国の2強です。

ほかの国においては、

  • オックスフォード大学(イギリス)
  • サムスン(韓国)
  • NTT(日本)

などが、AI研究をリードしている組織として挙げられています。

世界におけるAI研究の大手企業

AI研究で注目していきたい企業を紹介します。

GAFA

GAFAは、

  • Google
  • Apple
  • Facebook(Meta)
  • Amazon

の4社の頭文字を取った略称です。

いずれもIT産業に強みを持ち、2010年代から現在に至るまで、世界のITサービスをけん引しています。

GoogleはGoogleマップやGoogleカレンダー、Gmailなどの自社サービスにAIを適用させ、メールに届いた情報を他のサービスと連携させることで、AIによる疑似的な秘書サービスの運用を計画しています。

AppleはバーチャルアシスタントのSiriに加え、2024年発売予定のiPhone16で端末内のデータ処理をサポートする『エッジAI』の展開を予定しています。

Metaは、FacebookやInstagramにAIを利用することで、言語の自動翻訳を行いシームレスなコミュニケーションを可能にしています。

Amazonでは、商品の閲覧履歴や購入履歴から、比較検討すべき商品やおすすめの商品などを自動で選出し表示するシステムにより、顧客満足度を高めています。

Microsoft

日本でのユーザーが多いWindows OSなどを手掛けるMicrosoftも、AIへの先進的な取り組みを行っています。

2023年には、Microsoft 365 Copilot(コパイロット)というプロダクトを発表しています。

OpenAI社のGPT-4をもとにした大規模言語モデルを利用することで、

  • Teamsで話されている内容の要約
  • Outlookに送られてきたメールの内容の要約
  • Wordで記述したものに対してのフィードバック

などを可能にします。

OpenAI

OpenAI社は、人工知能の開発を行っている企業です。

自社製品としてのChatGPTのほか、Microsoftとの提携による製品リリースが複数あります。

2024年1月現在での最新エンジンはGPT-4となっており、文章生成の高速化、最適化などが図られています。

日本におけるAI研究の大手企業

先ほど示した統計データによると、日本におけるAI研究はアメリカや中国に比べてやや規模が小さいようです。

しかし、電子機器や通信関連産業の大手企業が、開発を進めています。

NTTデータ


世界のAI研究ランキングでも上位にあったNTTですが、自社の研究所における成果に加え、他の学術機関との連携などによって、最先端のAI技術を事業に活用しています。

以下は、NTTデータがAIを通じて実施した実証実験です。

  • ニュース原稿を自動生成し「AI記者」実現の可能性を検証
  • ICU(集中治療室)における重症患者の状態悪化の予兆を検知
  • 渋滞予測、信号制御シミュレーション
  • ロボットとセンサーによる介護効率化の可能性を検証

こうした、

  • 一定の基準に従って判断する事象だが、判断までに時間のかかるもの
  • ピンポイントに人の手が必要になるが長時間の監視・検証が必要なもの

といった業務では、AIを活用することで人間の負担を減らせると期待されます。

AIが社会課題の解決に大いに役立つ未来も遠くありません。

NEC

NECは「役に立つAI」を掲げ、AIによるDX、アナリティクスなどを他企業に導入・運用しています。

AI関連の特許出願数は4000件以上で世界第5位と、独自性・先進性に優れた研究も行っています。

具体的な導入例として、富山県での政策立案にAIを活用した事例が報告されています。

県民が幸福を感じる要素とそれぞれの県民のパーソナリティを因子として抽出し、それらの相関関係をAIで仔細に分析しました。

これにより、県民が富山県での生活をより豊かなものに出来るような政策を、理論的・体系的に検討実施できるようになると期待されています。

富士通

富士通では「信頼と新しい価値の創出で人と強調するAIへ」を掲げています。

AIは今後の社会課題解決のために大いに役立つことが期待されますが、同時に、AIに知見のない人にとっては、その信頼性が大きな課題ともなります。

判断理由や解決策の具体的な根拠についてまで解説する、ユーザーフレンドリーなAIの構築に取り組んでいる企業です。

富士通における近年の研究の一例として、対話型生成AIによる幻覚(ハルシネーション)検出機能の高精度化を実現しています。

対話型生成AIでは、誤った事柄をまるで事実のように出力してしまう「幻覚」という現象が発生しがちです。

富士通では、固有名詞や数値など、幻覚を引き起こしやすい部分を特に重点的に確認することで、既存のAIよりも幻覚を高精度に検出できる技術を確立しました。

AIの進化は日進月歩

AIは、社会課題を解決し、個人の生活をより豊かに快適なものにできるアシストツールとしての役割が期待されています。

その技術は日々進歩しており、1年前に新技術として登場したものが当たり前に流通している世界です。

AI研究を率先して行っている企業に注目することで、新しい技術の知識や、サービスへのヒントが得られるかもしれません。

参照URL
情報通信統計データベース 組織別AIランキング(Top10)の推移|総務省

今さら聞けない「GAFA」ってなに?|わらしべ瓦版

自ら走り方を学んで全力疾走! AIで“進化”するチーター型ロボットの実力(動画あり)|WIRED

AIの研究に強いアメリカの大学はこの2つ|NISSEN DIGITAL HUB

スタンフォード大学医学部との先進AIモデル開発に関する共同研究の開始|日本生命保険相互会社

AIの次のステップは流動性知能|IBM

ファーウェイのAI研究開発|HUAWEI

アリババがAI関連製品を一気に刷新 多くの業界で実用化へ|日経クロストレンド

アリババクラウド、企業向けに新たなAI言語モデル「通義千問」を発表|アリババジャパン

中国テンセント「海外事業とAI」が業績回復を牽引|東洋経済オンライン

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アップルが生成AI導入を加速、来年のiPhone 16で実装の可能性|Forbes

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Microsoft AI|Microsoft

Copilot for Microsoft 365 とは?特長や使い方を分かりやすく解説|ソフトバンク

OpenAI

【大手・ベンチャー】国内企業が開発した「国産AI」6選|Koto Online

NTTデータ

AIの活用事例|NTTデータ

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幸せ人口1000万!富山県が描くウェルビーイングを中心とした成長戦略とは~AIによる因果分析を効果的な政策立案に活用~|NEC

富士通

AIトラストと、対話型生成AIにおける富士通のAIトラスト技術|富士通

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