Googleの新AI機能Gemini 旧AI・Bardとの違いは
質問や依頼に対してテキストで返答をくれるテキスト生成AIは、IT系の各社が製品をリリースし始めています。2023年12月、Googleは従来のBardに変わって、新AIであるGeminiをリリースしました。新しく生まれ変わった生成AIに備わった機能、Bardとの違いについて解説し、業務効率化に活かす方法を考えます。
この記事の目次
Geminiの使い方
Geminiは、テキスト生成などが可能な生成AIであり、Googleが開発したアプリケーションです。
次のような指示に対応できます。
文章生成AIに質問して回答をもらう
ChatGPTやBing、同じくGoogleがリリースしている生成AI・Bardのように、テキストで質問文を入力して、生成AIにテキストで返答をもらうことができます。
この最下部、赤枠内に、質問文や生成AIに作成してほしいテキストについて記述します。
例えば『2025年に流行すると思われる飲食店のジャンル』についてのアイディアが欲しい場合は、そのままテキストで入力し、最後に右矢印をクリックします。
これらは近年の流行や消費者の動向から推測されており、新規事業のアイディアで困ったときの手助けなどに有効に活用できます。
もちろん将来のことであるため確実であるとは言えないものの、一定の説得力のある結果が得られます。
画像や音声入力で質問も可能
Geminiでは、画像を用いた検索や、生成AIによる回答に画像を含められます。
例えば、以下のようにイラストを添付したうえで、その詳細を質問できます。
拡張機能でさらに便利に
Geminiには、さらに生成AIを便利に使える拡張機能があります。
画面左下にある歯車のマークをクリックし、その中にある『拡張機能』をクリックします。
そこから利用できる拡張機能が5種類あります(2024年3月時点)。
Google Workspace
自身の管理・共有しているメールやドキュメントファイルなどから情報を検索して、必要な情報をピックアップできます(有料プランのみ利用可)。
Googleフライト
旅行の計画のために、最新のフライト情報を確認できます。
Googleホテル
自分の優先したい事項に基づいてホテルを検索してくれます。
Googleマップ
位置情報を活用して、旅行先でのルート案内等をよりよいものにします。
YouTube
YouTube上に上がっている動画から問題解決に役立ちそうなものをピックアップできます。
これらをすべてオンにすれば、「Gmailで送られた出張旅程をチェックし、フライトのチェックを行い、宿を取り、取引先までのルートを事前確認して、出張先企業に関する情報を動画で確認」ということまで、すべてGemini上で完了させられます。
有料版
Geminiはパソコンから無料で使えますが、よりハイスペックな生成AIが搭載されている有料版・Gemini Advancedも用意されています。
Gemini Advancedには、以下の特徴があります。
- Google Oneの有料プラン「AI Premium」への登録で利用可能に
- 月額使用料は19.99米ドル(2024年3月時点)
- 無料版よりもハイグレードな生成AIが利用できる
- Gemini for Google Workspace が利用できる
Gemini for Google Workspaceでは、
- GoogleドキュメントやGmailと連携して生成AIによる文書作成サポートが受けられる
- Googleスプレッドシートのデータを整理、処理できる
- Meetのビデオ通話において字幕翻訳を利用できる(Enterpriseのみ)
など、ユーザーの手を介すると処理に時間がかかる多くの業務を生成AIによって効率化・時短化できます。
スマホ版も登場
AndroidスマホからはGeminiアプリがリリースされており、iOSスマホからでもGoogleアプリのGeminiタブから、Geminiの機能が利用できます。
Androidスマホ向けGeminiアプリでは、Googleアシスタントと連携してIoT家電の制御なども可能です。
Bardとの違い
Googleが従来開発してきた生成AIであるBardとの違いについて、解説します。
GeminiはBardの上位互換
基本的に、GeminiはBardの上位互換です。
現在では、『Bard』と検索するとGeminiのページがヒットします(2024年3月時点)。
GeminiとBardで使われている言語モデルは異なりますが、Geminiに使われているものはより正確な返答ができるように進化しています。
画像解析機能を用いることで、テキストの内容を要約したり、解説を付け加えたりするのにも活用できるように進化しています。
有料版・スマホアプリの有無
Bardは、限定公開だったものの、利用者は全員無償で使用可能でした。
Geminiは全体公開となり、個人が基本的な利用をする範囲においては無償です。
よりハイグレードな生成AIの機能を利用したい人向けの有料プランや、スマホアプリへの展開は、Geminiになって新たに登場したものです。
こうした面でも、Bardからさらに進化したのがGeminiと考えていいでしょう。
Geminiを使う際に気を付けたいこと
便利に活用できるGeminiですが、使用に際してはいくつか留意したい点もあります。
不正確な返答をしてくるケースがある
テキスト生成AIによって得られた文章は、内容が不正確なケースがあります。
精度が高くなってきているとはいえ、Geminiでも同様の不具合は起こります。
下図は『東京の過去の最高気温を教えて』とGeminiに入力した際に得られたテキストです。
オレンジ色に背景色のついた列は、与えられた情報の確かさをGoogle検索で再確認できる、という表示です。
ここで得られたGeminiの返答が正確なのか、実際に気象庁のホームページで確認します。
2024年2月の東京の最高気温は、生成AIによる回答では23.0℃で、2月24日に記録されたことになっています。
しかし、気象庁のホームページを確認すると、東京の2月24日の最高気温は10.3℃です。
東京の2024年2月の最高気温は20日の23.7℃であり、『東京都』という意味で言った場合の10日・南鳥島における28.5℃となります。
いずれにせよ、生成AIが返答したものとは数値が異なっています。
確実なデータを基にする必要がある場合は、必ず一次ソースを確認する必要があるでしょう。
画像生成の精度が低い
Geminiは画像を取り扱えるように進化していますが、画像同士を合成したり、画像の一部を改変したり、といった画像生成については、必ずしもうまくいくとは限りません。
画像を合成して出力するように生成AIに指示を出しましたが、生成AIから返ってきたのは、柴犬と富士山が描かれたスマホケースの画像です。
さらにこの画像は、あるクリエイターさんが制作された商品の紹介ページで使われていたものでした。
Geminiは画像を合成しようとしたのではなく、条件に近しい画像をインターネット上から探してきたようです。
このようにして得られた画像に著作権上の問題が含まれている場合があるのはもちろんですが、Geminiの機能自体が画像加工などにまだ対応できていないようです。
画像を検索することはできても、画像を生成するのはまだ難しい、と認識しておいた方が無難でしょう。
個人情報の取り扱いには注意が必要
Geminiのトップページには、次のような注意文が表示されています。
『会話は、Geminiアプリで使用される技術の改善のため、人間のレビュアーによって処理されます。見られたくない内容や使用されたくない情報は入力しないでください。』
Geminiはリリースから日が浅いこともあり、まだ不完全な状態です。
生成AI技術向上のために人間の手でフィードバックが行われているようなので、個人の住所や電話番号、メールアドレス、その他個人情報にかかわる内容は入力しないように気を付ける必要があります。
使い方によっては強力な武器に
他のテキスト生成AIよりもスピーディーで、より正確性が上がっているのがGeminiの特徴です。
マーケティングや独創的なアイディアなどが思いつかなかった時の疑似的なブレインストーミング相手や、Gemini for Workspaceを用いた日程・旅程管理等で活用すれば、作業効率の改善が見込めます。
一方で、Geminiによって得られた情報の正確性は、高くなっているとはいえ、まだ完全なものではないので、厳密に正しい情報を得たい場合には一次ソースにあたることを忘れないようにしましょう。
また、個人情報の取り扱いについても留意が必要です。