【投資で役立つ】IR情報の読み方の基本
企業が投資家向けに公表しているIR情報について知っていますか?IRという言葉に馴染みがありつつも、意味が分からない方が多いのではないでしょうか。IR情報に関する知識は、資本主義経済を生きる上で必ず役に立ちます。今回はそんなIR情報についてわかりやすく解説します。
この記事の目次
IRとは~企業が投資家向けに行うアピール~
IRのIは投資家という意味のInvestor、Rは関係という意味の Relationsです。これらを略したものがIRです。会社が投資家に対して、投資の判断に必要な情報を公開することをIRと言います。
会社のサービスをアピールし、企業認知を高めるために行う広報とは異なります。IRでは、株価に影響を及ぼすことを公平に開示することが求められます。IRには、決算説明会や会社見学会、事業説明会などの対面での活動も含まれます。
形式は様々ですが、株式の取引が市場で行われている上場企業、上場はしていないがそれらと同様の規模で株式の取引を行う企業はIR活動をしています。それらの企業のWebサイトにはIR情報の欄が必ず掲載されています。
重要なIR情報
IRリリース(IRニュース)~最新情報はここでチェック~
企業の公式WebサイトにはIRリリース(IRニュース)という項目がよくあります。株価に大きな影響を及ぼす出来事が起こるとすぐにこのページが更新されます。
そのため、投資家はこのIRリリース(IRニュース)欄を頻繁に確認します。後述する「有価証券報告書」や「決算短信」が公表された際もここで案内されます。また、株価に影響を及ぼすレベルの不祥事が起こった際もここで事実関係の説明が掲載されます。
任天堂公式サイトを例に見てみましょう。
公式サイトにアクセスし、下にスクロールすると投資家向けのサイトへの案内があります。
(任天堂IRニューススクリーンショット 2022年10月25日)
もう一例紹介します。かっぱ寿司を経営するカッパ・クリエイト株式会社公式サイトにアクセスします。
投資家情報へ移動するためのボタンはサイトの上部や下部の会社概要や採用情報と同列に配置されていることが多いです。該当するページが見つけられないときは、『「調べたい企業名」 IR』で検索すると投資家向け情報のサイトへ移動できます。
また、検索エンジンに企業名を入力しただけで、投資家情報にアクセスできるように設定している企業もあります。
決算短信~3か月の業績が分かる~
決算短信を読む際に知っておかなければいけないのが、四半期開示です。四半期開示とは一年を4等分し3か月ごとに事業状況の報告書を作成する制度のことです。企業によって、決算月が異なります(※1)。1月から12月、4月から翌年の3月までの12か月間を事業年度としている会社が多いです。
上場企業には決算短信の提出が義務づけられています。第一四半期、第二四半期、第三四半期と3つの決算短信が開示されます。第四四半期は決算短信よりも内容がより充実している有価証券報告書が提出しなければならないため、決算短信は作成されません。
決算短信は主に賃貸対照表と損益計算表の二つからなります。
賃貸対照表はバランスシートとも呼ばれます。賃貸対照表にはある地点における、企業の財政を表す書類です。任天堂の「22年3月期 第一四半期決算短信」の賃貸対照表を見てみましょう。まず資産の部です。
※1)決算月は会社設立時に自由に決められる。官公庁に合わせて4月に事業年度開始にしている会社が多い
資産の部
資産の部では、保有している現金や有価証券のような流動資産、不動産や特許などの固定資産の内訳を見ることができます。
負債の部
負債は簡潔に言い換えると借金のことです。流動負債と固定負債という項目があります。流動負債は1年以内に支払いの期限がある負債のことを指します。逆に、固定負債は1年以内には支払いの期限が訪れない負債です。
会社に負債の支払い能力があるかどうかは流動資産が流動負債を上回っているかどうかで判断できます。
純資産の部
純資産の部の最後には負債と資産の合計値が掲載されています。ここがマイナス(△)になっている会社は経営が上手くいっておらず、危機的な状況に陥っている可能性があります。
次に損益計算表を見てみましょう。損益計算表はPL表(※2)とも言われます。損益計算表からは、期間内に「どれだけのお金を動かし」、「どれだけ利益を上げたか」を読み取ることができます。
大切なのは「売上高」から人件費や原材料費を引いた「営業利益」です。
「営業利益」は会社が事業単体によって得た利益です。事業の成否を判断するうえで最も重要な数値です。
安定して営業利益を生んでいる企業は、価値のあるサービスを市場に提供し続けているということになります。
そして不動産運用や株式の取引のような資産運用により得られた利益は営業外収益となります。もともとある資産を動かして得た利益です。
また特別利益や特別損失は、その期にだけ発生した例外的な利益と損失です。財産の処分によって生じた利益、盗難や天災などによって生じた損失がこれらに含まれます。
営業利益と営業外収益、特別利益から税や特別損失を引いたものが最終的な利益です。「四半期純利益」がこれに該当します。「四半期純利益」には連結している子会社の利益も含まれています。それらを差し引いた任天堂の純粋な利益が「親会社株主に帰属する四半期純利益」となります。
四半期短信は、最終決算に近づくほど重要視されるようになります。最終決算まで9か月ある第一四半期の決算内容ではその年度の事業の成否を判断する材料としては不十分だからです。逆に最終決算まで残り3か月しかない第三四半期の決算内容は、その年の事業の成否を判断する材料として信憑性が高くなります。
※2)Profit and Loss statementの略。
決算短信を読む上での注意点~短期の成績で判断しない~
決算短信の結果のみでその会社を評価してしまうのはよくありません。
半導体や自動車産業の決算は、原材料の供給状況に大きく左右されます。2022年の第一四半期の決算では世界的な半導体不足により、東芝の営業利益は赤字でした。しかし、半導体不足がこのまま続くかどうかはわかりません。
決算の結果の数値を見るだけではなく理由を考えることが大事です。
有価証券報告書~「事業の状況」と「経理の状況」に着目~
上場企業やそれに準ずる規模で有価証券の売買を行っている会社に提出が義務づけられています。この点は決算短信と同じです。有価証券報告書は投資家からもっとも重要視されるIR情報です。なぜならその年の事業の成否の判断が容易だからです。
有価証券報告書はどこの会社も「企業情報」、「事業の状況」、「設備の状況」、「提出会社の状況」、「経理の状況」の5つ項目が必ず掲載されています。
有価証券報告書から得られる情報量は決算短信とは比べ物にならないほど多いです。最低でも100ページ前後、有名企業では200ページに達するものもあります。まずは「事業の状況」と「経理の状況」に着目しましょう。
「事業の状況」に掲載されている事業内容とそれらのリスク分析、「経理の状況」に掲載されている賃貸対照表と損益計算表が企業の業績と今後を予測する上で重要だからです。
説明会資料~大事な情報が分かりやすく要約されている~
有価証券報告書は情報量が多すぎて、読むのが大変です。決算説明会の資料は企業が投資家に対し、有価証券報告書や決算短信の要点をわかりやすくまとめたものです。これを読むだけで事業内容や業績の概要がつかめます。
しかし、説明会資料はあくまでも二次情報です。有価証券報告書を読み込むとより具体的な情報を得られることに変わりはないので注意してください。
まとめ
今回はIR情報について解説しました。IR情報が更新されると多くの企業のWebサイトではIRリリース(IRニュース)という項目で紹介されます。そして今回紹介したIR情報は下の3つでした。
- 決算短信
- 有価証券報告書
- 説明会資料
決算短信の賃貸対照表と損益計算表の読み方はぜひ押さえてください。有価証券報告書や決算短信などの一次情報をわかりやすくまとめたのが説明会資料です。大まかに企業を分析したいときはこれだけ読むのも良いでしょう。
今回紹介した内容はIR情報の基礎的な部分です。ほかにも様々なIR情報があります。
投資が重要視されている今、IR資料を読み解く力はきっと役に立ちます。今回紹介した内容をぜひ頭の片隅に入れておいてください。