人間関係の悩みには二項対立を活用しよう!~状況整理はトラブル解決の第一歩~
前回の記事では、部門間の衝突を事例として取り上げて、コンフリクト・マネジメントの考え方を紹介しました。今回は、様々な場面で役立つ、個と個の対立を解消する方法を紹介します。
例えば、「脱原発と原発推進」についてニュースを見たとき、あなたはどちらが正しいと考えますか? 実際には、きっぱりとどちらか一方を正解に選ぶことはとても難しいのではないでしょうか。
このように、二つの項目が対立する関係にあることを「二項対立」と言います。二項対立は、物事を二つの対立する項目に分けることそのものを指すときもあります。
多くの場合、二つの対立した関係性は「コンフリクト(衝突)」を生みます。同時に、コンフリクトは「利害の対立」でもあります。
コンフリクトを利害の対立と捉えたとき、会社内の様々なトラブルに二項対立の考え方を応用することができます。二つの例を通して活用の仕方を説明します。
この記事の目次
例1:必要性 VS 許容性
A課長 「この企画をなんとしてでも通したい」
B部長 「君の提案は一理あるんだが、このままではちょっと……」
ある会議で、どうしても新しい企画を通したいA課長とそれを認めないB部長がいたとします。両者とも譲りません。A課長が通したいと考えていたのは、これまで伝統ある○○社にはなかったような斬新な企画です。
両者の主張の裏には……
A課長「売上が落ちている○○社には新しい企画が必要だ」
B部長「確かに当社には新しい企画が必要かもしれない。しかし、A課長の企画は粗削りすぎて多くの弊害がある」
実は、B部長も新しい企画の“必要性”は十分理解しています。ただ、“許容性”に欠けると反論していたのです。
“なぜ”に目を向けよう
「なぜ対立しているのか」を考え、コンフリクトの本質に向き合うことが大切です。
A課長が企画を通すためには、その必要性を訴えるだけではなく、B部長が新しい企画を聞いたときに懸念するであろう問題点を予想しなければなりませんでした。
そして、許容性の部分をカバーした提案をしていれば、案外すんなり受け入れてもらえたかもしれません。
例2:質 VS 量
顧客C「今月末までに、部品1000個を至急納品してほしい」
緊急の依頼で、今月末までに部品1000個注文があったとします。急いで作れば何とか間に合いますが、不良率が上がり、返品の増加が予想されます。
この場合、あなたならどうしますか?
「ある程度、返品が発生することをご了承いただいて、1000個納入する」
「確実に納品できる数量を示して、交渉を進める」
「お断りする」
など、選択肢は様々あります。
今回の要望は、「使用できる部品を1000個、至急納品すること」です。つまり、顧客Cは質も量も欠けることなく納品されることを求めています。
しかし、実際の取引においては、「これが出来るか」、「出来ないか」の二択だけで簡単に決めることはできません。どのようにすれば、最適な選択ができるのでしょうか?
「“何”に重点をおくか」を考えよう
♦”質”を重要視した場合
おそらく、お断りするケースが多くなります。不良品を納入してクレームになることを考えると、結果的に断ることが両社にとって良い選択だと考えるはずです。
♦”量”を重要視した場合
「期日までに決められた量を用意するのがビジネス、それが出来ないなら意味がない」と考える人は、量を確保するための方法を選択します。
例えば、不良率が高まるなら1200個納入すれば、ちょうど1000個になって良いのではないかと考えるでしょう。
このように、二項対立の考えを利用して整理することで、自分が選択するとき「何を優先するのか」に気づくことができます。仮に、二択で簡単に答えが出ないような場合でも、より納得のいく解決法をとることができるようになります。
“発想の転換”ができないか考えてみよう
ここでは、質と量の問題を逆説的に見ていくことにします。
♦「質は何によって高まるか」
質を高めるためには、何度も繰り返しコツを掴むまでやり続けること、つまり“量”をこなすことが必要です。
♦「量は何によって増えるか」
量を増やすためには、ムダやムラなく仕事をスムーズにこなすこと、つまり手順の“質”を高めることが求められます。
このとき、「質のために量が、量のために質が」それぞれ必要であることにお気づきでしょうか? こう考えると、二項対立していたものが、実は相互補完の関係にあると分かります。
このように、対立の関係性から因果や相乗、補完の関係に置き換えられる場合があります。ですから、本当に対立の関係にあるのか、今一度考え直してみることも大切です。
二項対立は、物事を整理するための方法のひとつです
二項対立で考えたからといって、どちらか一方を選ぶことが、必ずしも正解になるとは限りません。
二項対立を利用するのは、状況を整理し、複数の視点から物事を把握できるようになるためです。分けた二項にとらわれず、そこに潜むコンフリクトの本質を見落とさないようにしてください。
そうして出てきた問題点にしっかりと向き合いましょう。二項は本当に対立の関係にあるのか、一度疑い、見方を変えられないか考えてみることも大切です。