SDGsとAIの関係性について

最終更新:2024年07月24日 公開:2024年08月07日

みなさんは、「SDGs(持続可能な開発目標)」をご存知でしょうか?
SDGsは、人類が抱える様々な課題を解決し、地球を次世代につないでいくために誕生した、世界各国が取り組むべき目標です。2016年から始まったSDGsの取り組みは、多くのメディアやSNSで「可視化」され、世界中で浸透しているテーマの一つと言えます。

一方、SDGsの達成には、近年話題の「AI(人工知能)」が必要だと言われています。
AIは人間の知能を模倣した最新のコンピュータ技術で、機械学習や深層学習によりデータの分析・予測ができます。

遠いようで近い関係を持つSDGsとAI、お互いどのように関わっているのでしょうか。

本記事ではSDGsとAIの関係性について、「具体的な取り組み例」や「相互間に生じるメリット・デメリット」などの面から紹介します。

SDGsとAI


SDGsの達成には、様々な企業がイノベーション(技術革新)を起こす必要があると言われています。しかし、従来通りの技術では達成までに要する時間が長く、期限の2030年までに間に合いません。持続可能な開発を計画的に進める為には、より速く・優れた技術が必要です。そこで、作業効率化・データ分析に長けるAIが活躍します。

SDGs×AIの取り組み例などを紹介します。

環境保護


○違法な森林伐採や密猟の監視役として、特定の音を検知するAIシステムが用いられています。広大な森林で、秩序を乱す行いがされていないかを迅速に検知できます。検知後は、すぐに現地の人々や自然保護官に警告を送る仕組みなので、現地調査までの時間短縮に大きく貢献しています。
従前は航空機や人工衛星による監視が主流でしたが、その場合は異常検知から報告までに数日以上かかる為、場合によっては取り返しのつかないケースもあったに違いありません。また、このシステムには中古のスマートフォンが用いられる場合もあり、そういう面でも持続可能な取り組みと言えます。・・・
<目標15、「陸の豊かさも守ろう」に該当>

○生態系の調査や保護にもAIが活用されています。実例としてザトウクジラの保護に、音声抽出AIが役立っています。さまざまな雑音が飛び交う海中からザトウクジラの鳴き声だけを抽出して、エリアごとの個体数の分布を推測可能です。
このAIをより多くの生命体に応用すれば、幅広い生態把握に貢献できるはずです。・・・
<目標14、「海の豊かさを守ろう」に該当>

産業分野

人々の食や暮らしを支える第一次産業農業・漁業など)は、持続可能な開発において欠かせないテーマの一つです。環境負荷を抑えながら、生産性・効率性をあげるためにAIが活躍しています。

【農業・漁業】

AIとドローンの併用で、農薬や肥料の散布が効率化されています。AIの画像処理技術と自在に動くドローンの組み合わせで、広い農地の中から問題を有するエリア(栄養不足、虫害など)を正確に判断できます。これにより、必要な分だけピンポイントに散布できるので環境にやさしくコスト削減を図れます。(以前は、問題を有するエリアの特定が困難で、農地全体に散布する必要がありました。)・・・
また、AIを活用したリアルタイムの天候データ生成により、水の使用量を削減(雨水の供給ができるか否かを予測)した例もあります。・・・

漁業においても、正確な天候データが欠かせません。悪天候による作業の中断回数を極力減らし、収穫期の延長に成功した例があります。作業の中断回数を減らせば漁船の燃料消費と排ガス量が抑えられるので、収穫の効率化と同時に環境保護にも貢献できます。・・・
<目標12、「つくる責任 つかう責任」 などに該当>

【林業】

人手不足が深刻化している林業においては、森林資源の調査・分析業務の省力化が求められています。森林情報(写真、3Dデータ)のAI解析により、森林面積の把握や資源として有用な樹木の推定などの効率的な実施が見込めます。AI活用で適切な森林管理を達成できれば、林業の活性化や森林保全に繋がると言われています。・・・
<目標15、「陸の豊かさも守ろう」に該当>

医療・教育分野

質の高い医療・教育サービスは、人間社会を生きるためには必要不可欠なものです。医療と教育は、全ての人々が平等に受ける権利があります。しかし、住む国や地域が違うだけで、十分な医療・教育サービスを「受けたくても受けられない人」が沢山いるのです。この格差をできる限りゼロに近づける為にも、AIと最新の技術を駆使して解決していく必要があります。

【医療】


AIの画像処理技術、極めて高いデータ分析能力を駆使した、(AIによる)日頃の健康診断が期待されています。これにより、病気の予防やガンの早期発見がし易くなり、より多くの人々の健康維持と救命に貢献できます。
また、近くに病院がなくても、オンライン技術個人の健康データを分析するAIがあれば、遠隔で診断できます。この技術が広く普及すれば、地方や田舎に住んでいて通院に苦労する方々も安心して暮らせるようになるはずです。・・・
<目標3、「すべての人に健康と福祉を」などに該当>

【教育】


ICT化(情報・デジタル化)により、ここ数年で教育の在り方が大きく変わってきました。今や1人につき1台タブレットやパソコンが教材として配布される時代です。
教育のデジタル化に伴い、国内外問わず様々な授業を遠隔で受けられるようになりました。「学びたい」気持ちを、学校が遠い・アクセスが悪い等の理由で諦める必要はありません。
また、AIの活用によって、児童・生徒一人ひとりの学習定着度や苦手なポイントを分析し、最適な勉強法や問題を提案できます。個人の得意科目をとことん伸ばせるようになるでしょう。・・・
<目標4、「質の高い教育をみんなに」などに該当>

AI活用に伴うデメリット

ここまで紹介してきたように、AIはさまざまな分野においてSDGs達成にプラスの効果を与えています。その一方で、AI活用によるデメリットが生じているという事実も知っておく必要があります。

【AI普及の地域格差】

AIは高度なIT技術です。いまの日本では広く普及していますが、AIはどこでも利用できるとは限らないようです。
AIを導入して活用し続けるには、インターネットや電力などのインフラ整備が安定している環境が必要です。整備が不十分な環境では、AIがもたらす恩恵を最大限に受けられない可能性があります。これによる、富裕国と貧困国との格差の拡大が問題視されています。
また、AI技術の導入コストも決して安いものではありません。AI導入に伴う恩恵が如何に大きいとしても、それが本当にコストに見合っているかを判断するのは困難です。

新しいAIの技術開発は、イノベーションを起こす為には重要な任務です。しかし、そのAI技術を世界のどこにいても不自由無く使える体制づくりも、同程度(もしくはそれ以上)に欠かせない重要な任務なのです。
<目標10、「人や国の不平等をなくそう」に該当>

【AI稼働による電力消費・CO2排出量の増加/グリーンAIについて】


AIは膨大な量のデータを処理するため、コンピュータの処理装置を稼働する電力消費も必然的に増加します。それと同時に、稼働により発熱するコンピュータを冷却させる装置にも多くの電力が消費されます。結果的に、企業のAI普及(導入)率が上がると全体的なエネルギー消費量が増加し、CO2排出量が増加してしまうのです。
一説によれば、AIの開発過程で生じるCO2量は、自動車1台の寿命あたり(新車から廃車まで)に排出する量の約5倍と言われています。環境にやさしい取り組みを実現するべくAIを活用していても、そのAIがCO2を大量に排出していては意味がない、改善すべきだ、という意見もあります。・・・

AI発展には環境負荷の増大がついて回ります。それを妥協して見過ごせば、改善どころか悪化してしまう恐れまであります。そんな中、いまのAIが抱えるデメリットを改善しつつ、持続可能にフォーカスした「グリーンAI」という取り組みが注目されています。
グリーンAIとは、AIをできるだけ省エネで活用するために開発された技術・方法です。CO2の排出量やコンピュータの負担削減、AI搭載機器の省エネ・最適化、環境負荷軽減に繋がる選択肢の提案などの特長を有しています。グリーンAIの取り組みが幅広く普及すれば、世界中の環境問題に対して有効なアプローチができるはずです。・・・X
<目標13、「気候変動に具体的な対策を」に該当>

まとめ

今回はSDGsとAIの関係性について紹介しました。AIはさまざまな分野で活用されており、実際に効率化・省エネ化に貢献している例もあります。その一方で、AI開発により生じる環境負荷などの問題が残っている点も忘れてはいけません。
メリットだけでなくデメリットも存在しますが、基本的にAIはSDGsの達成にポジティブな効果を与えます。これからは、AI活用によるデメリットを最小限に抑えながら、メリットをより多くできるようなSDGsの取り組み・考え方が大事になってくるでしょう。

出典一覧

Ⅰ、古いスマホが活躍、違法伐採の「音」に耳を立てる – CNN.co.jp

Ⅱ、ザトウクジラの生態把握のためAIでクジラの「声」を聴くGoogleの取り組みが進行中 – GIGAZINE

Ⅲ、農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会:農林水産省 (maff.go.jp)

Ⅳ、SDGsの達成に向けて、AIはどのように役立つのか | 株式会社Recursive (recursiveai.co.jp)

Ⅴ、ICTを活用した農業用水のスマート水管理システム2選:農林水産省 (maff.go.jp)

Ⅵ、牡蠣のインターネット: The Yieldはオーストラリアの牡蠣養殖業者に日当たりの良い結果をもたらします – Microsoft オーストラリア ニュース センター

Ⅶ、ドローンやAIエンジンを活用し、森林の情報を「見える化」する林業アプリ開発へ。生研支援センター 令和3年度「イノベーション創出強化研究推進事業」に採択。金沢工業大学、石川県農林総合研究センター、石川県森林組合連合会、(株)エイブルコンピュータ | ニュース | KIT 金沢工業大学 (kanazawa-it.ac.jp)

Ⅷ、SDGsの達成にAIが欠かせない理由とは?イノベーションが変える未来を解説! | SDGs特化メディア-持続可能な未来のために (mirasus.jp)

Ⅸ、MIT Tech Review: CO2排出量は車の5倍、力任せの深層学習は環境に悪すぎる (technologyreview.jp)

Ⅹ、SDGs達成のためのAI活用法5選。サステナブルなグリーンAIとは。 | AI・アノテーションブログ | 株式会社ヒューマンサイエンス (science.co.jp)

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