顧客ロイヤルティとは?顧客をファンに変えるマーケティング手法と成功事例

マーケティング戦略において、注目すべき指標のひとつが「顧客ロイヤルティ」です。ロイヤルティ(loyalty)は直訳で「忠誠心」を意味しますが、ビジネスの文脈では、ブランドや商品に対する信頼や愛着を指します。
ロイヤルティが高い顧客は離脱しにくく、安定した売り上げにつながる上、彼らの口コミや紹介により、新規顧客も期待できます。特に近年は、サブスクリプション型サービスの広がりや市場の成熟により、「いかに顧客ロイヤルティを高めるか」がマーケティングの鍵を握っているとも言えるでしょう。
この記事の目次
顧客ロイヤルティとは
「顧客ロイヤルティ」とは、顧客があるブランドや企業に対して抱く“信頼”や“愛着”のことを指します。たとえば、Apple製品を愛用し、知人にもiPhoneを勧めるような人は、Appleに対して高い顧客ロイヤルティを持っていると言えるでしょう。
似た概念として「顧客満足度」がありますが、これは商品やサービスを利用した際の一時的な評価であるのに対し、顧客ロイヤルティはそのブランドとの継続的な関係性を意味します。
顧客ロイヤルティは、以下のような行動や心理に表れます。
- 継続的な購入(リピート)
- 周囲への推薦(口コミ・レビュー)
- 感情的な結びつき(好き、信頼できると思う)
このようなロイヤルティの高い顧客は、長期的な利益につながる重要な存在です。顧客ロイヤルティを高めることで、口コミによる新規顧客の獲得や広告費の削減、価格競争の回避などのメリットが期待できます。
心理ロイヤルティと行動ロイヤルティ
顧客ロイヤルティは「心理的側面」と「行動的側面」の2つに分けて捉えることができます。
企業や商品・サービスに対して顧客が感じる愛着や信頼が心理ロイヤルティです。
たとえば、継続的な購入や利用、SNSでのシェアや周囲への口コミなど、目に見える行動で示されるのが行動ロイヤルティです。
この2つは必ずしも連動しません。心理的には好意を持っていても行動にはつながらないケースもあれば、愛着はないのに習慣で継続利用している顧客もいるので、各組合せに応じた戦略的な対応が必要になります。
以下に、心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの4つの組み合わせパターンを紹介します。
①心理ロイヤルティ【高】×行動ロイヤルティ【高】
ロイヤルカスタマーとも呼ばれる、最も理想的な顧客です。商品や会社に愛着を持ち、かつ実際に購入したり、口コミをしたりしてくれる顧客なので、維持できるよう特に大切にすべきでしょう。
②心理ロイヤルティ【高】×行動ロイヤルティ【低】
好意的に思ってはいるものの、実際の行動には至らない顧客です。少し後押しがあれば購入してくれる可能性が高いので、積極的に働きかけていきたい層になります。
③心理ロイヤルティ【低】×行動ロイヤルティ【高】
別段愛着はないものの、継続的に利用してくれる顧客です。ただ、近いから行く、他が思いつかないから買うなどの理由で利用しているため、より近いところに他の店ができたり、新しい会社の商品を知ったりした場合、簡単に乗り換えられてしまいます。行動はあるからと油断せず、好きになってもらう工夫が必要です。
④心理ロイヤルティ【低】×行動ロイヤルティ【低】
ブランドに対する愛着もなく、実際の行動も伴っていない層です。認知がされていない、あるいはマイナスイメージを持っている可能性もあるため、なぜそうなっているのかの原因を追究する必要があります。
顧客ロイヤルティの指標
次に顧客ロイヤルティの代表的な指標を3つ紹介します。ただし、顧客ロイヤルティは、複数の指標やアンケートを組み合わせて総合的に評価するものであり、ずばりそのものを測るような尺度はありません。
NPS(ネットプロモータースコア)
ある商品・サービスに対する推奨者と批判者の割合を評価するスコアです。
このスコアは「あなたは○○を友人や知人に、どの程度すすめたいと思いますか?0〜10点で評価してください」という質問で計測します。この質問に対して0~6点をつけた人を批判者、7~8点なら中立者、9~10点は推奨者と分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSです。ブランド推奨意欲を定量的に把握でき、全体的なロイヤルティの傾向を知るのに有効です。
100人のうち、批判者が25人、中立者が30人、推奨者が45人の場合
NPS=45-25=20
CES(顧客努力指標)
顧客がサービスや商品を利用する際、また問い合わせを行う際にどの程度の労力を要したかを数値化する指標です。顧客にとっての負担を減らすことが、行動・心理両面のロイヤルティ向上に直結します。
「○○を利用するにあたってどれくらい負担を感じましたか?」という質問に対して7段階(数値が小さいほど負担が少ない)で回答してもらいます。その回答を低負担群(1~2)、標準群(3~4)、高負担群(5~7)の3群に分け、低負担群から高負担群の割合を引いた数値がCESです。
100人のうち、低負担群30人、標準群が20人、高負担群が50人の場合
CES=30-50=-20
LTV(顧客生涯価値)
顧客が自社と取引を開始してから終わるまでにもたらす利益の総額を表す指標です。
LTV=顧客単価×粗利率×購買頻度×取引期間-顧客の獲得・維持コストで求められます。
顧客単価(1回の購入金額)5000円、粗利率0.5、購入頻度(年間)4回、取引期間3年、顧客獲得・維持コスト2000円の場合
LTV=5000×0.5×4×3-2000=28000
ロイヤルティ・プログラム
ロイヤルティプログラムとは、ロイヤルカスタマーに対して特別な報酬を与えるマーケティングのことです。ロイヤルカスタマーの愛着や信頼を保つだけでなく、新規顧客の興味を惹いたり、既存の顧客をロイヤルカスタマーに引き上げたりする効果も期待できます。
価値共創型
企業や商品の価値を共に高めていくプログラムです。リサイクル素材の使用やフェアトレード商品の販売、売上の一部を寄付する等、購入や利用に社会的価値を付与することで、企業への愛着を高め、購買行動を促進します。
パーパス拡張型
企業理念や目標に絡めたプログラムです。企業の歴史やこだわりの技術などを知る機会を通じて、顧客の愛着や信頼を深めることを狙います。
経済圏拡張型
アプリの使用、口コミ、SNSでのアクションなど、購買行動以外にも報酬を付与するプログラムです。購買行動以外でもつながりを維持できるシステムにすることで、顧客離れを防ぎます。
経済圏連携型
相互の顧客にクーポンやギフトカードをプレゼントするなどして、他の企業と連携するプログラムです。他の経済圏を持つ企業と連携することで、関わりの薄い経済圏から新規顧客を得ることができます。
ノーティア・ノーポイント/シンプルティア型
購買行動や購入額にかかわらず、会員すべてに報酬を与えるプログラムです。新規顧客を得る足掛かりになるでしょう。
パーソナライゼーション型
個人に合わせたサービスや商品を提案するプログラムです。行動履歴をAIに学習させることで、個人のニーズに合わせた快適な体験を提供できます。既存顧客の離脱を防ぐのに有効でしょう。
顧客ロイヤルティの高まりが業績に繋がった例
Amazon:パーソナライズと利便性
Amazonは、顧客の閲覧・購入履歴をもとにパーソナライズされた提案を行い、利便性と満足度を向上させています。さらに、プライム会員制度では配送無料・動画・音楽など多様な特典を提供。継続利用を促進するロイヤルティ戦略の代表例です。
ソニー損保:顧客の声を可視化
ソニー損保では「コエキク改善レポート」というページで、顧客の意見とそれに対する改善内容を公開。単なるアンケートで終わらせず、改善までの流れを“見える化”することで、信頼感を高めています。
無印良品:アプリ利用や一貫した理念
「MUJI passport」アプリでは、購入や来店、レビューなどでが「MUJIマイル」が貯まり、一定のマイルに応じてクーポンが配布されます。購買だけでなくブランドへの関与度そのものに価値を持たせることで、顧客のエンゲージメントを高めています。また、環境配慮や機能性を重視した製品思想の一貫性が、ブランドへの共感と信頼を育んでいます。
まとめ
この記事の要点は以下の通りです。
- 顧客ロイヤルティは心理ロイヤルティと行動ロイヤルティからなる指標
- 心理ロイヤルティと行動ロイヤルティどちらも高めることでロイヤルカスタマーを得られる
- 顧客ロイヤルティはNPS、CES、LTVなどの指標から読み取る
- 特典や付加価値をつける、顧客のニーズを汲み取り信頼を得るなど、ターゲット層や目的に合わせた戦略が重要
顧客ロイヤルティを意識して、効果的なマーケティングを行いましょう!