失敗しないアンケート調査|高回答率を実現して無駄をなくすポイントとは?

「アンケート調査を実施したが、思ったように回答が集まらなかった」「分析しようとしたら、質問が多すぎて活用できなかった」――このような経験はありませんか?
アンケート調査は、顧客やユーザーの意見を数値・言葉として収集できる便利な手法です。しかし、設計や運用を誤ると、必要な情報が得られず、時間やコストが無駄になることも。
本記事では、ビジネスやマーケティング現場で活用できる「失敗しないアンケート調査」の進め方と、高い回答率を実現するためのポイントを解説します。
この記事の目次
アンケート調査とは
アンケート調査とは、調査対象の意見や行動を把握するため、特定の期間内に様々な調査方法で様式化した質問で回答を求め、データを集める調査方法です。
(総務省:アンケート調査)
Web上での実施や街頭調査など、集めたいデータの形式によって最適な方法は変わります。
アンケートの種類
アンケート調査は主に以下の2つに分類されます。
定量調査(数値化できるデータ)
回答を選択肢で取得し、統計処理により客観的な傾向を把握します。大量のサンプルを集めたい時に向いています。定量調査は手順や分析方法さえきちんとしていれば、誰が行っても客観的なデータを集めることができます。
定性調査(自由記述など)
定性調査は定量調査では知ることのできない、細かな感覚や意見を得ることができますが、調査者の力量によって得られる情報の信頼性に差があります。また解釈に時間がかかるため大量のデータが欲しい時にはおすすめされません。
主な調査手法は以下の通りです。
質問紙調査(Web/紙)
1番一般的なアンケート調査です。回答が集まりやすいというメリットがあります。
会場調査(CLT)
試飲会など、会場に足を運んでもらい調査する手法です。リアルな声を聴きやすいメリットがあります。
ホームユーステスト(HUT)
長期間の使用が必要なアイテムなどの使用感を調査する際に用いられることが多いです。
郵送調査
アンケートを直接郵送する手法です。高齢者など、デジタル機器の操作が難しい、会場に足を運ぶのが難しい層への調査に適しています。
街頭調査
街ゆく人に声をかけて調査する手法です。ランダム性がかなり高いことが特徴です
アンケート実施の手順
1.調査の目的を明確にする
何を知りたくて調査するのかを明確にします。目的がざっくりし過ぎていると本題とは関係ない・必要ない質問を作ってしまい、回答者の負担を増やしてしまうだけでなく、分析の手間や正確性にもかかわってきます。また、対象者の範囲を絞ることで、必要なデータのみを集めることができます。
2.質問設計を行う
基本的には必要最低限の質問にすることが望ましいです。ただ、研究など目的によっては反対項目を作るなどして、より正確な調査を行う必要もあります。
また、名前など個人情報を集めるのは、回答数にもかかわってくるので慎重に行いましょう。
3.説明文・同意事項を記載する
集めた情報の処理や、謝礼の説明、注意事項などを明記しておきましょう。
4.配布・回収を行う
対象者にアンケートへ回答してもらいます。
5.データ分析
クロス集計、アソシエーション分析、クラスター分析などを目的に応じて使い分けましょう。
信頼性を高めるためにクロンバックのα係数を確認し、不適切な質問項目を除外することも有効です。
6.結果の共有・報告
分析結果を可視化し、関係者にわかりやすく共有しましょう。報告書やプレゼン資料にまとめると効果的です。
回答数を増やすポイント
所要時間を短くする
回答にかかる時間が長くなれば、それだけ回答者に負担がかかり、途中離脱も増えてしまいます。質問数を見直す、質問文をより簡潔で分かりやすくするなどして、短時間で終わるアンケートを作りましょう。
謝礼を用意する
魅力的な謝礼があれば、多少時間のかかる調査や、労力が必要な調査でも協力してくれる可能性は高まります。手軽に使えるポイントやクーポンなどが適しているでしょう。
必要のない個人情報は尋ねない
必要性を感じない個人情報の開示の要求はそれだけで心理的ハードルとなり、回答者を減らします。不必要な項目は削除しましょう。
アンケートの質を高めるポイント
クロンバックのα係数
クロンバックのα係数は、質問の内容が信頼できるかどうかを示す信頼性の指標の1つで、質問項目の内的一貫性を算出した数値です。学術的には0.8以上であることが望ましいとされています。
もしα係数が0.6など低い数値であれば、質問項目を見直し、他の質問との相関が低い質問を除外すると良いでしょう。
質問文の検討
質問文を作ったら、以下の3つのポイントに気をつけて添削をしましょう。
- 質問の意図がはっきり伝わるか
(「最近」ではなく「ここ1カ月」へ) - 誘導するような文章になっていないか
(「好きですか」ではなく「どう思っていますか」へ) - 2つ以上のことを1つの質問文で尋ねていないか
(「〇〇や××についてどう思っていますか」ではなく2つの質問に分ける)
分析方法の例
アンケートで得られたデータを活用するためには、適切な分析手法を選ぶことが重要です。ここでは、基本的な集計から高度な分析まで、目的に応じた代表的な方法を紹介します。
集計方法(基本の分析)
単純集計(GT:Grand Total)
もっとも基本的な集計方法で、設問ごとの回答数、比率、平均値などを集計します。たとえば「サービスに満足していますか?」という質問に対して「はい:80人/いいえ:20人」のように全体の傾向を把握できます。初心者にも扱いやすく、最初のステップとしてよく使われます。
クロス集計
2つ以上の設問を掛け合わせて分析する手法です。「性別」×「サービス満足度」のように、属性ごとに回答傾向を比較できます。ターゲット層の違いや意識の差を把握したいときに有効です。マーケティングやユーザー分析の基本として広く使われています。
定量的データの分析手法
時系列分析
収集したデータを時間軸に沿って並べ、変化の傾向や周期性を分析します。例えば、毎月実施する満足度調査の結果を時系列で並べることで、改善施策の効果を検証できます。季節変動やトレンド把握にも向いています。
クラスター分析
似た特徴を持つ回答者をグループ化(クラスタリング)する手法です。たとえば、「価格重視型」「品質重視型」といったように、価値観や行動の似通ったグループを発見できます。ペルソナ設計やターゲティングに活用されます。
アソシエーション分析
「もしAを選んだ人は、Bも選びやすい」といった、回答項目同士の関連性を発見する手法です。マーケティングでは、「◯◯を買った人は××も買っている」といった購買傾向分析でよく利用されます。アンケートでは「関心が高い項目の組み合わせ」などを探るのに有効です。
主成分分析
複数の設問項目を少数の「主成分(共通因子)」にまとめて、データの全体構造を把握する手法です。たとえば10個の質問に共通する価値観を2〜3個の要素に集約することで、データをシンプルにし、視覚化もしやすくなります。要因の特定や視覚的な比較に適しています。
決定木分析
質問項目と回答結果の関係を「条件分岐の木」のように表す手法です。たとえば「年代・性別・利用頻度」などの条件を枝分かれさせながら、「満足度が高くなる条件は?」といった因果関係を視覚的に導き出せます。わかりやすく説明できるため、社内共有資料にも向いています。
定性的データの分析手法
アフターコーディング
自由記述のようなテキスト回答を、共通するキーワードや内容ごとにカテゴリー分けし、数値化・分類する方法です。たとえば「改善してほしい点」という設問に対し、「価格」「対応」「納期」などにグループ化することで、定量的な処理が可能になります。人の手での分類が必要ですが、意味のある集計につながります。
テキストマイニング
自然言語処理技術を用いて、自由記述データから重要な語句やキーワード、出現パターンなどを抽出する手法です。単語の頻度、共起語(同時に使われる単語)、感情分析などを通じて、回答者の感情や関心を可視化できます。大量の記述回答を扱う場合に特に効果を発揮します。
まとめ
この記事の要点は以下の通りです。
- アンケート調査には「定量」と「定性」があり、目的に応じた使い分けが重要
- 最初に目的を明確にし、無駄な質問を削減することで高回答率が得られる
- 謝礼や設問構成を工夫することで、離脱率の低いアンケートを実現できる
効果的なアンケート調査を行い、時間や労力を効率的に使いましょう。